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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第12章 半月

 子どもなりにそう判断し、少しの間ならと頷いた。
「うん」
 昌福は腕に抱えた花束はそのままに、男に手を引かれて歩き出した。
 丁度その時、向こうから歩いてきた商人風の中年男が二人とすれ違った。彼は露天商で、普段から町中に店を出し、野菜や果物を売っている。サヒョン一座がこの町に来て大分経つので、昌福の顔もよく憶えていた。
「あれは宋与徹旦那(ダー)さま(リー)の家の執事じゃないか。宋家の執事が昌福に一体何の用なんだ?」
 訝しげに振り返った時、既に二人の姿は彼の視界から消えていた。

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