月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第12章 半月
「景福!?」
香花は慌てて靴を突っかけ、景福に駆け寄る。チマが汚れるのも厭わず、自分も地面に膝をつき、うなだれる景福の顔を覗き込んだ。
「どうしたの、何があったの?」
同じ問いを繰り返すと、漸く景福がゆるゆると面を上げた。
「弟が―昌福がいなくなった」
「え」
香花は言葉を失った。
瞼にあどけない顔の少年が浮かぶ。
懸命に皿をまわしていた姿がいまだに忘れられない。
「それは、一体、どういう―」
香花の物問いたげな表情に、景福は人が変わったような烈しい口調で言った。
「不吉な予感がするんだ、香花」
景福は弟のいなくなった経緯をかいつまんで話した。
彼が昌福が姿を消したのに気付いたのは、つい今し方だという。今日は午後からは自由時間が与えられており、興行はなかったため、幼い昌福は兄と共に町の露店を見て回るのを愉しみにしていた。
香花は慌てて靴を突っかけ、景福に駆け寄る。チマが汚れるのも厭わず、自分も地面に膝をつき、うなだれる景福の顔を覗き込んだ。
「どうしたの、何があったの?」
同じ問いを繰り返すと、漸く景福がゆるゆると面を上げた。
「弟が―昌福がいなくなった」
「え」
香花は言葉を失った。
瞼にあどけない顔の少年が浮かぶ。
懸命に皿をまわしていた姿がいまだに忘れられない。
「それは、一体、どういう―」
香花の物問いたげな表情に、景福は人が変わったような烈しい口調で言った。
「不吉な予感がするんだ、香花」
景福は弟のいなくなった経緯をかいつまんで話した。
彼が昌福が姿を消したのに気付いたのは、つい今し方だという。今日は午後からは自由時間が与えられており、興行はなかったため、幼い昌福は兄と共に町の露店を見て回るのを愉しみにしていた。