月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第13章 十六夜の悲劇
これでは、幾ら探し回っても、昌福が見つかるはずがない。
香花は震える手で昌福の身体に触れた。
昌福は―何も身につけてはいなかった。思わず眼を背けた香花をちらりと見、光王は昌福の身体をあちこち引っ繰り返して検分している。
「光王、こんなことをしてる場合じゃないわ。早くお医者さまに見せないと」
漸く衝撃から立ち直った香花が叫ぶと、光王は沈痛な面持ちで首を振った。
「もう遅い。ここを見ろ」
言われたままに光王が差し示す場所―昌福の首を見ると、何とも惨たらしく紐の跡が残っている。誰かに強く首を絞められたのだ。
「お前には酷な話かもしれないから、心して聞け。昌福は何者かに陵辱されている。しかも一度ならず、何度も犯された痕跡が身体に残っているようだ」
「誰が―誰が、こんな酷いことを」
香花は涙が止まらなかった。
まだ八歳の少年を無情にも欲しいままに犯し、挙げ句に殺す。そんな酷いことをする鬼畜のような輩がこの世にはいるのだ。人ひとりを殺して、平気な顔でのうのうと生きている。
香花にはその犯人が誰であるか、おおよその見当はついている。
「鬼ね、まるで人の面を被った鬼の仕業だとしか思えない」
香花が呟くと、光王が頷いた。
「―そういえば、あの両班宋与徹とかいったか。あやつの従者が綺麗な旅芸人の子どもにを連れていたのを見たと町中で話している者がいた。おかしいとは思ったが、まさか、ここまでやるとは流石に俺も思わなかった」
光王の沈んだ口調には深い自戒の念がこもっていた。話を聞いたのは、光王がまだ小間物を売り歩いている昼下がりのことだった。あの時、すぐに何かを感じて手を打てば、昌福の生命が失われることはなかった―と自分を責めているのだ。
「しばらく昌福の傍についていてやれるか?」
問いかけられ、香花は涙ながらに頷いた。
香花は震える手で昌福の身体に触れた。
昌福は―何も身につけてはいなかった。思わず眼を背けた香花をちらりと見、光王は昌福の身体をあちこち引っ繰り返して検分している。
「光王、こんなことをしてる場合じゃないわ。早くお医者さまに見せないと」
漸く衝撃から立ち直った香花が叫ぶと、光王は沈痛な面持ちで首を振った。
「もう遅い。ここを見ろ」
言われたままに光王が差し示す場所―昌福の首を見ると、何とも惨たらしく紐の跡が残っている。誰かに強く首を絞められたのだ。
「お前には酷な話かもしれないから、心して聞け。昌福は何者かに陵辱されている。しかも一度ならず、何度も犯された痕跡が身体に残っているようだ」
「誰が―誰が、こんな酷いことを」
香花は涙が止まらなかった。
まだ八歳の少年を無情にも欲しいままに犯し、挙げ句に殺す。そんな酷いことをする鬼畜のような輩がこの世にはいるのだ。人ひとりを殺して、平気な顔でのうのうと生きている。
香花にはその犯人が誰であるか、おおよその見当はついている。
「鬼ね、まるで人の面を被った鬼の仕業だとしか思えない」
香花が呟くと、光王が頷いた。
「―そういえば、あの両班宋与徹とかいったか。あやつの従者が綺麗な旅芸人の子どもにを連れていたのを見たと町中で話している者がいた。おかしいとは思ったが、まさか、ここまでやるとは流石に俺も思わなかった」
光王の沈んだ口調には深い自戒の念がこもっていた。話を聞いたのは、光王がまだ小間物を売り歩いている昼下がりのことだった。あの時、すぐに何かを感じて手を打てば、昌福の生命が失われることはなかった―と自分を責めているのだ。
「しばらく昌福の傍についていてやれるか?」
問いかけられ、香花は涙ながらに頷いた。