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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第13章 十六夜の悲劇

「景福!」
 呼ぶと、かなり離れた先にも拘わらず、景福は立ち止まった。
「首飾りをありがとう。あなたの分まで大切にする」
 大声で叫ぶのに、景福が笑って頷いた―ような気がした。というのも、既に香花の場所からでは、景福の表情までは判らないほど離れていたからだ。
 景福が踵を返し、再びかけてゆく。やがて、その後ろ姿は完全に香花の視界から消えた。
 香花は貰ったばかりの首飾りをかけてみる。
 初夏の清々しい風が香花の髪を揺らし、庭に群れ咲くピンク色の花たちを優しくあやすように撫でていった。
               (第三話は今日で終わり、明日から第四話へ)

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