月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第14章 第4話【尹(ユン)家の娘】・夢見る老婦人
その手がつと伸び、ピンク色の花びらにそっと触れた。
「変わらないわ」
素花は亡くなる前から、優しい娘だった。今のように咲いている花を摘むのを嫌い、小さな虫でさえ踏まないようにしていた。
そこで、老婦人は首を振る。
「いいえ、素花は亡くなってなんかいないわ」
そう、素花は死んだわけではない。だからこそ、あんな風に元気な姿でまた、母の許に帰ってきてくれたのではないか。
「私としたことが、何を馬鹿なことを考えていたのかしら。たとえ一瞬でも、私の可愛いあの娘が死んだだなんて、ありもしないことを考え、皆が囁くでたらめを信じようとするなんて」
これまで彼女の良人を初め、誰もが口を揃えて言った。素花はもう死んだ、けして帰ってくることはないのだと。
だが、やはり、それは全くの嘘にすぎなかった。素花は生きていた。生きて、再び彼女の前に姿を見せてくれたのだ。
「変わらないわ」
素花は亡くなる前から、優しい娘だった。今のように咲いている花を摘むのを嫌い、小さな虫でさえ踏まないようにしていた。
そこで、老婦人は首を振る。
「いいえ、素花は亡くなってなんかいないわ」
そう、素花は死んだわけではない。だからこそ、あんな風に元気な姿でまた、母の許に帰ってきてくれたのではないか。
「私としたことが、何を馬鹿なことを考えていたのかしら。たとえ一瞬でも、私の可愛いあの娘が死んだだなんて、ありもしないことを考え、皆が囁くでたらめを信じようとするなんて」
これまで彼女の良人を初め、誰もが口を揃えて言った。素花はもう死んだ、けして帰ってくることはないのだと。
だが、やはり、それは全くの嘘にすぎなかった。素花は生きていた。生きて、再び彼女の前に姿を見せてくれたのだ。