月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第14章 第4話【尹(ユン)家の娘】・夢見る老婦人
井戸端で膝を抱えて座り、泣いていたソンジュの肩に優しく置かれた手があったのだ。慌てて弾かれたように顔を上げたソンジュの眼に、微笑んだ美しい少女の顔は菩薩さまのように映じたものだ。
―何を泣いているの?
素花はソンジュの涙をそっと人さし指でぬぐい、懐から干菓子を取り出し、ソンジュの手に握らせてくれたのだ。
―屋敷には歳の近い子どもが少ないでしょ、退屈してたのよ。これからは私の友達になってね?
奴ひが両班の子女と友達になるだなんて、まだ幼かったソンジュにもあり得ないことだと判っていた。一緒にいるところを見られたたけでも、下手をすれば〝無礼〟だと鞭打たれる。
―そんなわけにはゆきません。お嬢さまのお気持ちは嬉しいけど、また、女中頭さまに怒られるから。
もごもごと言ったソンジュに、素花は花のような微笑を向けた。
―大丈夫よ。セオクに見つからないようにすれば良いし、もし、そんなことでセオクがお前をぶったりしたら、私がちゃんとセオクに話すから、ね?
―何を泣いているの?
素花はソンジュの涙をそっと人さし指でぬぐい、懐から干菓子を取り出し、ソンジュの手に握らせてくれたのだ。
―屋敷には歳の近い子どもが少ないでしょ、退屈してたのよ。これからは私の友達になってね?
奴ひが両班の子女と友達になるだなんて、まだ幼かったソンジュにもあり得ないことだと判っていた。一緒にいるところを見られたたけでも、下手をすれば〝無礼〟だと鞭打たれる。
―そんなわけにはゆきません。お嬢さまのお気持ちは嬉しいけど、また、女中頭さまに怒られるから。
もごもごと言ったソンジュに、素花は花のような微笑を向けた。
―大丈夫よ。セオクに見つからないようにすれば良いし、もし、そんなことでセオクがお前をぶったりしたら、私がちゃんとセオクに話すから、ね?