月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第14章 第4話【尹(ユン)家の娘】・夢見る老婦人
少女の言葉は事実だった。その日を境に、女中頭がソンジュをぶつことも鞭打つこともなくなった。ソンジュは仕事の合間に、素花の部屋の呼ばれ、お茶の支度をすることになったが、その後は大抵、素花と共に他愛ない少女らしい会話を愉しみながら、使用人の実では到底口に出来ないような贅沢なお菓子やお茶を口にした。
ソンジュが素花と出逢ったのは今から九年前、八歳のときである。素花は一つ上の九歳になっていた。以来、二人は身分を超えた友としての関係を築いてきた。むろん、態度はあくまでもお嬢さまに対してのものだし、ソンジュ自身、素花に対して出すぎた物言いを一度たりともしたことはない。それでも、ソンジュは素花が自分をあの幼い日、約束したように〝友達〟だと思ってくれているのがよく判った。
素花はけしてソンジュに対して権高であったり、お嬢さま然とした態度を取らなかった。
天は無情だ。あれほどに美しく賢く、誰よりも心優しいお方がわずか十八年しか生きられないだなんて、誰が想像するだろう?
ソンジュが素花と出逢ったのは今から九年前、八歳のときである。素花は一つ上の九歳になっていた。以来、二人は身分を超えた友としての関係を築いてきた。むろん、態度はあくまでもお嬢さまに対してのものだし、ソンジュ自身、素花に対して出すぎた物言いを一度たりともしたことはない。それでも、ソンジュは素花が自分をあの幼い日、約束したように〝友達〟だと思ってくれているのがよく判った。
素花はけしてソンジュに対して権高であったり、お嬢さま然とした態度を取らなかった。
天は無情だ。あれほどに美しく賢く、誰よりも心優しいお方がわずか十八年しか生きられないだなんて、誰が想像するだろう?