月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第15章 不幸な母
光王と香花は互いの想いを確かめ合ったばかりだ。丁度、ウォングが産まれてひと月ほど経った頃、旅芸人の幼い少年がこの地に住む両班に殺されるという事件が起こった。その両班は年端のゆかない美少年ばかりを攫い、陵辱していたが、旅芸人の昌福がその毒牙にかかってしまったのだ。
あまりの酷い所業に天も怒ったのか、両班は事件後まもなく、亡くなった。亡くなったという表現が適切かどうかは判らない。両班がある朝、陽が高くなっても起きてこなかった。両班が男妾と夜通し戯れ、朝遅いのは毎度のことだったゆえ、屋敷中の誰もが不審にも思わなかった。ところが、である。
流石に昼間になっても姿を見せない良人の様子を見にいった妻は、寝所で事切れている良人を発見した。病死ではなく、明らかに何者かに殺害されていたのだ。両班は肩から背中にかけて、ばっさりと袈裟掛けに斬られていた。相当の剣の遣い手の仕業と見えたが、外聞をはばかり、死因は病死と公表された。
あまりの酷い所業に天も怒ったのか、両班は事件後まもなく、亡くなった。亡くなったという表現が適切かどうかは判らない。両班がある朝、陽が高くなっても起きてこなかった。両班が男妾と夜通し戯れ、朝遅いのは毎度のことだったゆえ、屋敷中の誰もが不審にも思わなかった。ところが、である。
流石に昼間になっても姿を見せない良人の様子を見にいった妻は、寝所で事切れている良人を発見した。病死ではなく、明らかに何者かに殺害されていたのだ。両班は肩から背中にかけて、ばっさりと袈裟掛けに斬られていた。相当の剣の遣い手の仕業と見えたが、外聞をはばかり、死因は病死と公表された。