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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第15章 不幸な母

 光王の美貌は香花とは異なり、朝鮮人離れれしており、朝鮮人が〝異様人〟と呼ぶ外国人―蒼い眼、金色の髪を持つ人種にも見える。 であるから、光王はモテる。以前、香花と知り合うまでは、拘わった女たちの数は当人でも数え切れないほどで、〝金のために女と寝るのに、心など要らない〟と言い切るほどであった。その言葉どおり、彼は小間物を売り歩く傍ら、両班の奥方や豪商の内儀に求められれば伽の相手をしてやり、しこたま金を稼いだ。
 香花は、光王のそのような過去を人づて―或いは本人から聞いて知っている。両想いだと判ったのも、いつものごとく大喧嘩した挙げ句、光王が町の妓房へ出かけて朝帰りしたのがきっかけだった。その時、光王は妓房にあがったものの、妓生を抱いてはおらず、そのまま帰ってきただけだった。
 が、香花は女の匂いを身体中に纏いつかせて朝帰りした光王の行動を誤解してしまった。
―惚れた女がすぐ側にいるのに、どうして、別の女を抱かなきゃならないんだ?
 彼は香花に、はっきりとそう言った。 
その〝惚れた女〟というのが、香花だったのだ。

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