月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第15章 不幸な母
光王の声だけでなく、息遣いが耳朶をくすぐる。そっと眼を開くと、いつしか香花の身体は光王の逞しい両腕の中に閉じ込められていた。
「香花、応えろ。俺はお前の何だ?」
香花は震えながら、光王を見上げた。
光王の切れ長の双眸が滴るような色香を含んでいる。誘惑するような蠱惑的なまなざしでありながら、同時に冷え冷えとした光を放つその瞳が今はただ怖ろしい。こんな光王は嫌だ。いつもの冗談ばかり言う光王の方が良い。
「あ、私―」
光王のことは好きだ、大好きだ。でも、こんな風に迫ってこられても、香花はどうふるまえば良いのか判らない。
小刻みに身を震わせる香花を見、光王が深い息を吐き出した。
「全く、いつまで経っても、ねんねだな。お前は」
光王は苦笑めいた笑いを浮かべ、香花から手を放した。
「そんなに怯えた眼で見られたら、こっちもやってられねえよ。まるでいたいけな少女に無理強いしている助平なおじさんの心境になるだろ」
「香花、応えろ。俺はお前の何だ?」
香花は震えながら、光王を見上げた。
光王の切れ長の双眸が滴るような色香を含んでいる。誘惑するような蠱惑的なまなざしでありながら、同時に冷え冷えとした光を放つその瞳が今はただ怖ろしい。こんな光王は嫌だ。いつもの冗談ばかり言う光王の方が良い。
「あ、私―」
光王のことは好きだ、大好きだ。でも、こんな風に迫ってこられても、香花はどうふるまえば良いのか判らない。
小刻みに身を震わせる香花を見、光王が深い息を吐き出した。
「全く、いつまで経っても、ねんねだな。お前は」
光王は苦笑めいた笑いを浮かべ、香花から手を放した。
「そんなに怯えた眼で見られたら、こっちもやってられねえよ。まるでいたいけな少女に無理強いしている助平なおじさんの心境になるだろ」