月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第15章 不幸な母
香花が何も言えないでいるのをどう思ったのか、光王が強く顔を彼女の乳房に押しつけた。光王に触れられた時、いつも感じるあの感覚―得体の知れない妖しい震えが乳房の先端から全身へとひろがってゆく。
「香花」
掠れた声が囁き、チョゴリの紐に手が伸びる。
「光王、お願い、止めて」
香花の声には哀願するような響きがこもってしまったのは、この場合、致し方なかっただろう。
「香花―」
しかし、我を忘れかけている光王には香花の言葉は届いていなかったようだ。
光王の手がチョゴリの紐を解いたその時、香花が悲鳴を上げて光王の身体を両手で思いきり押した。
「いや!」
一瞬の沈黙が永遠にも思われた。
光王の端整な顔によぎったのは、形容しがたい感情であった。彼にとっても、香花にここまで決定的に拒絶されるとは思ってもみなかさったようだ。また香花自身、道の体験への恐怖はあっても、いざとなれば、光王を受け容れられると安易に考えていた。
「香花」
掠れた声が囁き、チョゴリの紐に手が伸びる。
「光王、お願い、止めて」
香花の声には哀願するような響きがこもってしまったのは、この場合、致し方なかっただろう。
「香花―」
しかし、我を忘れかけている光王には香花の言葉は届いていなかったようだ。
光王の手がチョゴリの紐を解いたその時、香花が悲鳴を上げて光王の身体を両手で思いきり押した。
「いや!」
一瞬の沈黙が永遠にも思われた。
光王の端整な顔によぎったのは、形容しがたい感情であった。彼にとっても、香花にここまで決定的に拒絶されるとは思ってもみなかさったようだ。また香花自身、道の体験への恐怖はあっても、いざとなれば、光王を受け容れられると安易に考えていた。