月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第15章 不幸な母
「俺は―、昨日からお前を怖がらせてばかりだな」
光王が額に落ちた長い前髪をかき上げ、ほろ苦く微笑した。
「誰よりもお前を守ってやりたい、大切にしてやりたいと思っているのに、俺が現実にしていることといえば、裏腹にお前を怖がらせているだけだ。本当に俺はお前にとって何なんだろう」
光王が低い声で呟き、吐息をついた。
「だが、香花。これだけは聞いてくれ」
いつになく真摯な声音と表情に、香花はまたたきも忘れて、光王の顔を見つめた。
「お前が言ってた婆さんのことだ」
あ、と、香花は昨夜の出来事を改めて思い出す。朴家の赤ン坊の話の前、自分は何を話していたのだったか。
「あっ、あの話のこと? 隣村の県監(ガン)さま(ダーリー)のお屋敷の話ね」
さして重要な話題だとも思えなかったため、話したこと自体を既に忘れてしまっていたほどだ。
光王は沈んだ面持ちで頷いて見せた。
光王が額に落ちた長い前髪をかき上げ、ほろ苦く微笑した。
「誰よりもお前を守ってやりたい、大切にしてやりたいと思っているのに、俺が現実にしていることといえば、裏腹にお前を怖がらせているだけだ。本当に俺はお前にとって何なんだろう」
光王が低い声で呟き、吐息をついた。
「だが、香花。これだけは聞いてくれ」
いつになく真摯な声音と表情に、香花はまたたきも忘れて、光王の顔を見つめた。
「お前が言ってた婆さんのことだ」
あ、と、香花は昨夜の出来事を改めて思い出す。朴家の赤ン坊の話の前、自分は何を話していたのだったか。
「あっ、あの話のこと? 隣村の県監(ガン)さま(ダーリー)のお屋敷の話ね」
さして重要な話題だとも思えなかったため、話したこと自体を既に忘れてしまっていたほどだ。
光王は沈んだ面持ちで頷いて見せた。