月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第15章 不幸な母
「小間物売りの男と共に暮らしているようです。こちらは香花の兄ということらしいですが、中には到底、そんな風には見えないと申す者もおりました」
聞いたままを述べると、理蓮の眼が光った。
「それは、どういうことだ? 兄には見えないとは?」
「はい、二人をよく知る―これは光王と名乗る兄がよく昼飯を食べる酒場の女将が申していたことですが」
と、前置きして、ソンジュは告げた。
―何だかねぇ、兄妹というよりは、恋人同士っていうか、夫婦のように見えるのさ。
もうかれこれ四十に手が届きそうな女将は、肩をすくめながら言った。
「その兄は小間物売りと申したな。では、町に店を持っているのか?」
「いえ、特に決まった場所に店を持っているわけではなく、行商をして町中を売り歩いているようでございます。香花だけでなく、兄の方もまたすごぶるつきの美形で、言い寄ってくる女が後を絶たないとか」
聞いたままを述べると、理蓮の眼が光った。
「それは、どういうことだ? 兄には見えないとは?」
「はい、二人をよく知る―これは光王と名乗る兄がよく昼飯を食べる酒場の女将が申していたことですが」
と、前置きして、ソンジュは告げた。
―何だかねぇ、兄妹というよりは、恋人同士っていうか、夫婦のように見えるのさ。
もうかれこれ四十に手が届きそうな女将は、肩をすくめながら言った。
「その兄は小間物売りと申したな。では、町に店を持っているのか?」
「いえ、特に決まった場所に店を持っているわけではなく、行商をして町中を売り歩いているようでございます。香花だけでなく、兄の方もまたすごぶるつきの美形で、言い寄ってくる女が後を絶たないとか」