月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第15章 不幸な母
自分はあまりにも歳を取りすぎた。本当なら、とっくに跡取りに家督を譲って隠居しているべき歳だ。今の県監としての任期が切れたら、彼は国王殿下に願い出て、今度こそ引退しようと考えていた。それでも二年前までは、まだ若い者には負けないと気焰を吐くだけの元気もあったが、今はただ、早く任務から解放されて楽になりたい。
やはり、娘の死がこたえているのだな、と、徳義は改めて思わずにはいられない。
素花は徳義の自慢の娘だった。親が口にするのもおかしいが、ただ容色麗しいだけでなく、聡明で、しかも使用人たちにも気遣いを示す優しい娘であった。自分が少しでも長く手許に置いておきたいと思ったばかりに、長く家にとどめすぎ、みすみす婚期を逸してしまった。十四、五で嫁いでいれば、もしかしたら、素花は不幸な宿命を避け得なかったとしても、可愛い孫の一人くらいは残してくれたのでないか。
徳義は近頃、しきりにそんなことを考えるようになった。悔いても戻らないことをいたまでもくよくよと考えるのは、徳義の最も嫌いとするところである。しかし、最近、素花のことについては未練たらしく、ああしてやれば良かった、こうしてやれば良かったと思い返しては後悔するばかりだ。
やはり、娘の死がこたえているのだな、と、徳義は改めて思わずにはいられない。
素花は徳義の自慢の娘だった。親が口にするのもおかしいが、ただ容色麗しいだけでなく、聡明で、しかも使用人たちにも気遣いを示す優しい娘であった。自分が少しでも長く手許に置いておきたいと思ったばかりに、長く家にとどめすぎ、みすみす婚期を逸してしまった。十四、五で嫁いでいれば、もしかしたら、素花は不幸な宿命を避け得なかったとしても、可愛い孫の一人くらいは残してくれたのでないか。
徳義は近頃、しきりにそんなことを考えるようになった。悔いても戻らないことをいたまでもくよくよと考えるのは、徳義の最も嫌いとするところである。しかし、最近、素花のことについては未練たらしく、ああしてやれば良かった、こうしてやれば良かったと思い返しては後悔するばかりだ。