
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第15章 不幸な母
「いやですわ。こんなお婆さんが着たって、かえって珍妙に見えるだけですよ。これは、私のものではございません」
「では―、誰かに差し上げるために作らせたのか?」
徳義は思い当たる娘の顔を思い描いてみるが、徳義の親戚にも理蓮の親戚にも、そのような娘はいない。徳義、理蓮の兄弟姉妹共に、既にその子らは四十近い年齢に達していて、むしろ、孫たちが十代前半から後半に差しかかろうとしている。
自分たちは娘を授かるのに十八年を要したが、他の兄弟姉妹たちは結婚後、一、二年―遅くとも数年内に初めての子を儲けている。考えてみれば、素花は孫と言っても良いほどの歳で漸く得た子であった。
その娘が十八歳、これから花開くという歳で突然、夭折してしまったのだ。母である理蓮の心が哀しみに凍ってしまったとしても不思議はない。
想いに沈む徳義の耳を、理蓮の明るい声が打つ。
「では―、誰かに差し上げるために作らせたのか?」
徳義は思い当たる娘の顔を思い描いてみるが、徳義の親戚にも理蓮の親戚にも、そのような娘はいない。徳義、理蓮の兄弟姉妹共に、既にその子らは四十近い年齢に達していて、むしろ、孫たちが十代前半から後半に差しかかろうとしている。
自分たちは娘を授かるのに十八年を要したが、他の兄弟姉妹たちは結婚後、一、二年―遅くとも数年内に初めての子を儲けている。考えてみれば、素花は孫と言っても良いほどの歳で漸く得た子であった。
その娘が十八歳、これから花開くという歳で突然、夭折してしまったのだ。母である理蓮の心が哀しみに凍ってしまったとしても不思議はない。
想いに沈む徳義の耳を、理蓮の明るい声が打つ。
