月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第15章 不幸な母
「あなた(ボシヨヨ)、あの子が、素花が私たちのところにやっと帰ってきたんですよ。あの娘ももう今度こそ嫁入りが近いのですもの。この際、金に糸目は付けず、できるだけの嫁入り支度を整えてやりましょう」
「そなた―、何を言っている。素花は二年前に亡くなった。あの娘が帰ってくることはない」
徳義は茫然と呟いた。
だが、良人の言葉は理蓮の耳を素通りしているようだ。
「お相手の父君は何しろ兵曹参判の要職でいらっしゃるのだから、我が家しても、それにふさわしい支度をしてやらねば。あまりに貧相では、素花があちらのお宅で肩身の狭い想いをしてしまいます」
理蓮が浮き浮きと言うのに、徳義は絶句した。
確かに二年前、素花と都の両班趙家との間では縁談が進んでおり、婚約寸前であったことは事実だ。当事者の素花と相手の子息はまだ一度も対面したことはなかったが、漢陽から送られたきた相手の姿絵は凛々しく、素花もひとめで気に入ったようであった。
「そなた―、何を言っている。素花は二年前に亡くなった。あの娘が帰ってくることはない」
徳義は茫然と呟いた。
だが、良人の言葉は理蓮の耳を素通りしているようだ。
「お相手の父君は何しろ兵曹参判の要職でいらっしゃるのだから、我が家しても、それにふさわしい支度をしてやらねば。あまりに貧相では、素花があちらのお宅で肩身の狭い想いをしてしまいます」
理蓮が浮き浮きと言うのに、徳義は絶句した。
確かに二年前、素花と都の両班趙家との間では縁談が進んでおり、婚約寸前であったことは事実だ。当事者の素花と相手の子息はまだ一度も対面したことはなかったが、漢陽から送られたきた相手の姿絵は凛々しく、素花もひとめで気に入ったようであった。