月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第15章 不幸な母
素花は、その度に〝いやですわ、お父さま〟と白い頬を上気させて恥ずかしげにうつむいたものだった。その初々しい様がまた親の欲目にも恥じらう花のようで美しかった。
素花の葬儀には、都の趙家からも多額の香典を携え執事だという使者がやって来たが、結局、婚約者当人が姿を見せることはなかった。徳義も一時は薄情なものだと相手の冷淡さを恨めしくも思ったけれど、婚約したとはいっても、趙家の息子と素花はまだ正式に結納を取り交わしたわけではなく、あくまでも内輪で取り決めただけのものにすぎなかった。
正式な婚約者でもないのに、葬儀に参列を望むのは不適切であったやもしれぬと後から思い直したのである。向こうは過分の香典を贈り、代参とはいえちゃんと人をよこして参列させたのだから、十分に礼を尽くしてくれたと受け取るべきだろう。そうは思っても、やはり、親としては、執事の代参などではなく、当人に参列して欲しかったというのが本音だ。
素花の葬儀には、都の趙家からも多額の香典を携え執事だという使者がやって来たが、結局、婚約者当人が姿を見せることはなかった。徳義も一時は薄情なものだと相手の冷淡さを恨めしくも思ったけれど、婚約したとはいっても、趙家の息子と素花はまだ正式に結納を取り交わしたわけではなく、あくまでも内輪で取り決めただけのものにすぎなかった。
正式な婚約者でもないのに、葬儀に参列を望むのは不適切であったやもしれぬと後から思い直したのである。向こうは過分の香典を贈り、代参とはいえちゃんと人をよこして参列させたのだから、十分に礼を尽くしてくれたと受け取るべきだろう。そうは思っても、やはり、親としては、執事の代参などではなく、当人に参列して欲しかったというのが本音だ。