月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第15章 不幸な母
素花の死後、趙家との縁は切れた。風の便りに、今年の春、趙家では息子に嫁を迎えたと聞いている。それを聞いても、徳義には何の感慨も湧かなかった。
素花はもう亡くなったのだ。相手がいつまでも死んだ婚約者に義理立てする必要はないし、徳義もまたそんなことを期待していなかった。
それでも、やり切れない想いは、どうしてもぬぐい切れない染みのように残る。
本当なら、その男の傍らに寄り添って花嫁衣装を纏うのは素花であったはずなのに―。
不覚にも滲んできた涙を眼の裏で乾かし、徳義は理蓮に近寄った。
「良いか、素花は、私たちの娘は二年前、死んでしまったのだ。とても辛く信じがたいことではあるが、事実は事実として、私たちは受け容れなければならない。判るか、夫人。素花だって、私たちがあれの死を乗り越えることをこそ望んでいるだろう」
理蓮の両肩に手を置き、顔を覗き込み、噛んで含めるように言い聞かせる。
素花はもう亡くなったのだ。相手がいつまでも死んだ婚約者に義理立てする必要はないし、徳義もまたそんなことを期待していなかった。
それでも、やり切れない想いは、どうしてもぬぐい切れない染みのように残る。
本当なら、その男の傍らに寄り添って花嫁衣装を纏うのは素花であったはずなのに―。
不覚にも滲んできた涙を眼の裏で乾かし、徳義は理蓮に近寄った。
「良いか、素花は、私たちの娘は二年前、死んでしまったのだ。とても辛く信じがたいことではあるが、事実は事実として、私たちは受け容れなければならない。判るか、夫人。素花だって、私たちがあれの死を乗り越えることをこそ望んでいるだろう」
理蓮の両肩に手を置き、顔を覗き込み、噛んで含めるように言い聞かせる。