月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第16章 夢と現の狭間
狭い砂利道の脇に、ひっそりと石仏が安置されている。石が風化してしまって、しかとは判別ではないが、観音菩薩を彫ったものだろうか。
香花はしゃがみ込んで祈りを捧げた後、立ち上がった。石仏の少し先からは、道端に石榴の樹が数本並んで植わっている。生え方を見た限りでは、自然に自生したものに違いない。実りの季節を迎え、どの樹も紅い艶やかな実を鈴なりにつけている。
香花は手頃な樹に近づき、一個だけ実をもぐと、観音像に供えた。更にもう一個取る。
そのときだった、道の向こう側から低い人声が聞こえてきた。
「奥さま(マーニン)、奥さま(マーニン)」
香花は人よりはかなり耳が良い。しばらくして聞こえてきた声は、かなり焦りを帯びていた。
「奥さま、大丈夫でございますか?」
到底見過ごしにはできなくて、香花はその言葉を耳にするやいなや、駆け出していた。 手にした石榴は急いで懐にねじ込む。
香花はしゃがみ込んで祈りを捧げた後、立ち上がった。石仏の少し先からは、道端に石榴の樹が数本並んで植わっている。生え方を見た限りでは、自然に自生したものに違いない。実りの季節を迎え、どの樹も紅い艶やかな実を鈴なりにつけている。
香花は手頃な樹に近づき、一個だけ実をもぐと、観音像に供えた。更にもう一個取る。
そのときだった、道の向こう側から低い人声が聞こえてきた。
「奥さま(マーニン)、奥さま(マーニン)」
香花は人よりはかなり耳が良い。しばらくして聞こえてきた声は、かなり焦りを帯びていた。
「奥さま、大丈夫でございますか?」
到底見過ごしにはできなくて、香花はその言葉を耳にするやいなや、駆け出していた。 手にした石榴は急いで懐にねじ込む。