月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第16章 夢と現の狭間
どうやら、どこかのお屋敷の主従のようだ。少し手前に座り込む女性と懸命に介抱する使用人らしい若い女の姿があった。
「どうかしましたか?」
香花が気遣わしげに声をかけると、まず若い使用人の方が弾かれたように顔を上げた。
香花を認めた一瞬、その娘の表情が強ばったように見えたのは、気のせいだったろうか。
それにしても、どこかで見たことのある娘のような気がするのだが。
その女の顔に狼狽が走ったのはほんのひと刹那のことだった。彼女はいかにもよく躾けられた使用人らしく、いつまでも不躾に香花を見つめていることはなく慎ましく視線を逸らした。
「いかがされました?」
重ねて問うと、若い女中が主人になり代わって応える。
「実は、奥さまが腰を痛められてしまったようなので、ここで立ち往生していたのです」
「まあ、それはいけないわ」
香花は表情をさっと曇らせ、座り込む女主人の方に近寄った。
「どうかしましたか?」
香花が気遣わしげに声をかけると、まず若い使用人の方が弾かれたように顔を上げた。
香花を認めた一瞬、その娘の表情が強ばったように見えたのは、気のせいだったろうか。
それにしても、どこかで見たことのある娘のような気がするのだが。
その女の顔に狼狽が走ったのはほんのひと刹那のことだった。彼女はいかにもよく躾けられた使用人らしく、いつまでも不躾に香花を見つめていることはなく慎ましく視線を逸らした。
「いかがされました?」
重ねて問うと、若い女中が主人になり代わって応える。
「実は、奥さまが腰を痛められてしまったようなので、ここで立ち往生していたのです」
「まあ、それはいけないわ」
香花は表情をさっと曇らせ、座り込む女主人の方に近寄った。