
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第16章 夢と現の狭間
「ああ、このお茶ね。これは薔薇茶ですわ。我が家の庭に咲く薔薇の花びらを乾燥させ、お茶にしましたの。お茶だけでなく、ジャムもできますのよ。私の娘が作りました」
香花が頷く。
理蓮の小さな血の気のない顔には、取り繕うような笑みが浮かんでいる。
「奥さま」
ソンジュにどこか遠慮がちに声をかけられ、理蓮が我に返ったように頷く。
「例のものをこちらへ」
手で円卓を差し示すと、ソンジュはつい今し方、下男が置いていったばかりの荷を丁重な手つきで解いた。
ソンジュが両手で捧げ持つようにして円卓に載せたのは、何と明らかに上等な仕立てと思われるチマチョゴリ数着と、きらびやかな宝石箱であった。
理蓮は無造作に宝石箱を引き寄せ、蓋を開ける。中を何げなく覗き込んだ香花は、小さな声を上げた。珊瑚の腕輪、翡翠の首飾り、琥珀の指輪―と数え切れないほどの宝飾品がぎっしりと詰まっている。いずれもが一つ売れば、村の一家が半年はゆうに暮らせるほど高価なものばかりだろう。
香花が頷く。
理蓮の小さな血の気のない顔には、取り繕うような笑みが浮かんでいる。
「奥さま」
ソンジュにどこか遠慮がちに声をかけられ、理蓮が我に返ったように頷く。
「例のものをこちらへ」
手で円卓を差し示すと、ソンジュはつい今し方、下男が置いていったばかりの荷を丁重な手つきで解いた。
ソンジュが両手で捧げ持つようにして円卓に載せたのは、何と明らかに上等な仕立てと思われるチマチョゴリ数着と、きらびやかな宝石箱であった。
理蓮は無造作に宝石箱を引き寄せ、蓋を開ける。中を何げなく覗き込んだ香花は、小さな声を上げた。珊瑚の腕輪、翡翠の首飾り、琥珀の指輪―と数え切れないほどの宝飾品がぎっしりと詰まっている。いずれもが一つ売れば、村の一家が半年はゆうに暮らせるほど高価なものばかりだろう。
