
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第16章 夢と現の狭間
「旦那さま、お帰りなさいませ」
理蓮は座ったままではあったが、優雅に一礼し、嬉しげに顔をほころばせた。
「これは可愛らしい客だな。そなたのそのように幸せそうな表情を見るのは久しぶりだ」
ユン徳義は穏やかな声音で言った。
「ご覧になって。私たちにまた、可愛い娘ができるかもしれなくてよ。今、このお嬢さんに私たちの許に来て下さらないかしらとお願いしていたところなの」
香花は一旦立ち上がる。両手を組み眼の高さまで持ち上げ、その場に座って深々と頭を下げた。目上の人に対する拝礼である。
県監は眼を細めて香花の挨拶を受けていたが、やがて、穏やかに笑んだまま夫人に言った。理蓮も香花も、徳義が実は石榴の樹の影に潜んで、二人のやり取りを途中から聞いていたのだとは知らない。
「夫人、あまり可愛らしいお客人を困らせてはいけないよ。このお嬢さんは随分と弱り切っているようだ」
理蓮は座ったままではあったが、優雅に一礼し、嬉しげに顔をほころばせた。
「これは可愛らしい客だな。そなたのそのように幸せそうな表情を見るのは久しぶりだ」
ユン徳義は穏やかな声音で言った。
「ご覧になって。私たちにまた、可愛い娘ができるかもしれなくてよ。今、このお嬢さんに私たちの許に来て下さらないかしらとお願いしていたところなの」
香花は一旦立ち上がる。両手を組み眼の高さまで持ち上げ、その場に座って深々と頭を下げた。目上の人に対する拝礼である。
県監は眼を細めて香花の挨拶を受けていたが、やがて、穏やかに笑んだまま夫人に言った。理蓮も香花も、徳義が実は石榴の樹の影に潜んで、二人のやり取りを途中から聞いていたのだとは知らない。
「夫人、あまり可愛らしいお客人を困らせてはいけないよ。このお嬢さんは随分と弱り切っているようだ」
