月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第1章 第一話【月下にひらく花】転機
「それにしても、叔母上さまは、そのお若さでもうお祖母(ばあ)さまにおなりになるのね。きっと、叔母上さまが赤ちゃんをお抱きになったら、誰もがご自分のお子だと勘違いされてしまうわ」
これはあながちお世辞ではない。三十七歳の叔母はまだ三十前後にしか見えず、二ヵ月後に生まれる初孫を腕に抱いていても、到底、それが孫だと思う人はいないだろう。
叔母はその言葉に更に笑み崩れそうになり、コホンと小さな咳払いをした。
「私のことはこの際、どうでもよろしい。私が今、話しているのは香花、そなたのことなのですよ。お陰さまで、私もこうして人並みに孫を持つ歳になりました。お亡くなりになった姉上も生きておいでであれば、そろそろ孫を持つ歳になっていたでしょう。それを思うと、私は姉上が不憫でお労しくて―。香花、良いですか、金家の命運は今やそなたにかかっているのですよ。そなたが一日も早く聟を迎え、子をなしてこそ、姉上もこの家も浮かばれるというものです。私はそなたを我が娘同様だと思っているのです。そなたが生む子は我が孫同然。お願いだから、香花、無念の中に逝った姉上や私を安心させるためにも、早く聟を取っておくれ」
最後は泣き落とし戦術に変更したのかと思いきや、叔母はどうやら本当に感極まって泣き出してしまったらしい。袖から手巾を取り出し、おいおいと泣く叔母に、香花は弱り果てる。
何と言っても、自他共に香花の母代わりをもって任じる叔母の涙には弱い。
「叔母上さま、判りました。私も母上を亡くしてからというもの、ずっと叔母上さまを母のように思わせて頂いてきたのです。できるだけ、叔母上さまのご期待に添えるように努力はするつもりです」
下手に出ておいて、そっと叔母の顔を窺う。
これはあながちお世辞ではない。三十七歳の叔母はまだ三十前後にしか見えず、二ヵ月後に生まれる初孫を腕に抱いていても、到底、それが孫だと思う人はいないだろう。
叔母はその言葉に更に笑み崩れそうになり、コホンと小さな咳払いをした。
「私のことはこの際、どうでもよろしい。私が今、話しているのは香花、そなたのことなのですよ。お陰さまで、私もこうして人並みに孫を持つ歳になりました。お亡くなりになった姉上も生きておいでであれば、そろそろ孫を持つ歳になっていたでしょう。それを思うと、私は姉上が不憫でお労しくて―。香花、良いですか、金家の命運は今やそなたにかかっているのですよ。そなたが一日も早く聟を迎え、子をなしてこそ、姉上もこの家も浮かばれるというものです。私はそなたを我が娘同様だと思っているのです。そなたが生む子は我が孫同然。お願いだから、香花、無念の中に逝った姉上や私を安心させるためにも、早く聟を取っておくれ」
最後は泣き落とし戦術に変更したのかと思いきや、叔母はどうやら本当に感極まって泣き出してしまったらしい。袖から手巾を取り出し、おいおいと泣く叔母に、香花は弱り果てる。
何と言っても、自他共に香花の母代わりをもって任じる叔母の涙には弱い。
「叔母上さま、判りました。私も母上を亡くしてからというもの、ずっと叔母上さまを母のように思わせて頂いてきたのです。できるだけ、叔母上さまのご期待に添えるように努力はするつもりです」
下手に出ておいて、そっと叔母の顔を窺う。