月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第17章 夢の終わり
大抵なら、どんな小さな物音でも逃さず聞き取れる香花だが、このときばかりは迂闊だった。どうやら、この付近には栗の樹もあるらしく、細い道の所々には、まだ
イガに包まれた栗の実まで転がって
いる。それらを立ち止まって拾い
籠に放り込みながら、山盛りに積
まれた石榴を一個手に取り、力を
込めて割ってみる。
既に熟れすぎて少し弾けている実なので。、素手でも容易に割れた。中には紅瑪瑙を思わせる透き通った小粒がぎっしりと詰まっている。香花はひと粒ひと粒を口に入れながら、ゆっくりと歩いた。少々お行儀悪いが、この際、誰も見ていないのだからと言い訳する。
香花は頭上を仰ぎ、樹々の発散する香りを胸一杯に吸い込む。時折、小鳥の啼き声が長閑に響き渡り、道の両側には早くも紅葉を始めた樹も見受けられる。
空気が澄んできたせいか、遠くに見渡せる山々も夏とは違って、くっきりと立ち上がって見えるようだ。
イガに包まれた栗の実まで転がって
いる。それらを立ち止まって拾い
籠に放り込みながら、山盛りに積
まれた石榴を一個手に取り、力を
込めて割ってみる。
既に熟れすぎて少し弾けている実なので。、素手でも容易に割れた。中には紅瑪瑙を思わせる透き通った小粒がぎっしりと詰まっている。香花はひと粒ひと粒を口に入れながら、ゆっくりと歩いた。少々お行儀悪いが、この際、誰も見ていないのだからと言い訳する。
香花は頭上を仰ぎ、樹々の発散する香りを胸一杯に吸い込む。時折、小鳥の啼き声が長閑に響き渡り、道の両側には早くも紅葉を始めた樹も見受けられる。
空気が澄んできたせいか、遠くに見渡せる山々も夏とは違って、くっきりと立ち上がって見えるようだ。