月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第17章 夢の終わり
ああ、どうしたら良いの?
心ばかりが焦るが、手の打ちようがないのだ。
とかにく追っ手を振り切って逃げるしきかない。それにしても、一体、追跡者は誰なのだろう。良家の令嬢というわけでもなく、豪商の妻としいうわけでもない。誘拐したとて、身の代金など要求できもしないのに。
流石に走り続けて、息が上がっている。このまま倒れ伏して休みたいと思うほど、付かれていた。
折角取った石榴や栗は転んだときに、籠ごと地面に落ち、四方に散らばってしまっている。もう拾い集めるだけの気にもなれなかった。それでも、逃げなければと気力を振り絞って、ようよう起き上がった香花の瞳に映じたのは、一人の大柄な男だった。
頭に布を巻き、薄汚れた身なりをしている。どかのお屋敷の下男といったところか。むろん、見憶えのない顔である。縦も横も尋常でなく馬鹿でかく、香花がまともに立ち向かっても、所詮は力でねじ伏せられることは眼に見えていた。
心ばかりが焦るが、手の打ちようがないのだ。
とかにく追っ手を振り切って逃げるしきかない。それにしても、一体、追跡者は誰なのだろう。良家の令嬢というわけでもなく、豪商の妻としいうわけでもない。誘拐したとて、身の代金など要求できもしないのに。
流石に走り続けて、息が上がっている。このまま倒れ伏して休みたいと思うほど、付かれていた。
折角取った石榴や栗は転んだときに、籠ごと地面に落ち、四方に散らばってしまっている。もう拾い集めるだけの気にもなれなかった。それでも、逃げなければと気力を振り絞って、ようよう起き上がった香花の瞳に映じたのは、一人の大柄な男だった。
頭に布を巻き、薄汚れた身なりをしている。どかのお屋敷の下男といったところか。むろん、見憶えのない顔である。縦も横も尋常でなく馬鹿でかく、香花がまともに立ち向かっても、所詮は力でねじ伏せられることは眼に見えていた。