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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第2章 縁(えにし)~もう一つの出逢い~

 だが、いずれにせよ、明善が陰謀に加わっていることは間違いないと考えて良いだろう。あんな盗っ人の言葉を鵜呑みにするわけではないが、あの黄金色(きんいろ)に輝く瞳の奥には、ひとかけらの嘘もなかった。
 恐らく男は事実をありのままに告げたに相違ない。
「旦那さま、どうして―」
 どうして、そのような怖ろしい陰謀に手を染めたのですか?
 それから先は言葉にならなかった。
 闇の底で紫陽花がひそやかに花開いている。あの盗っ人に遭遇するまでの闇夜が嘘のように、空は明るく晴れ渡り、丸い月が煌々と夜空を飾っていた。月光に濡れ、淡く発光しているかのように見える紫陽花は昼間と異なり、艶めいた美しさを発散させている。
 日毎に色を深めてゆく花の色が今は涙に滲んで見えた。

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