テキストサイズ

月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第17章 夢の終わり

「光王、来てくれたのね」
 香花の眼に熱い雫が溢れ、頬を濡らす。甘えた子犬のように光王の胸に頬を押しつけてきた香花の背に光王の太い腕が巻き付けられた。
「おいおい、抱きついてくるのは大歓迎だが、こんな場所では流石に俺もいまいちもその気にはなれねえな。小屋の外にいたのは全部のしてやったが、それでも早々に逃げた方が良さそうだぜ」
 わざとぶっきらぼうに言う光王の頬が照れたように紅い。それが香花には見えなかったのは光王にとっては幸いだった―。
 外に出てみると、光王の言葉どおり、二人の男が大の字になって地面に転がっていた。
 香花を攫って連れてきた連中である。
 一瞬、死んでいるのかと心配したが、息遣いがあることから見ても、だだ気絶しているだけのようだ。
「さ、行くぜ」
 光王が言い、香花の手を取った。しかし、香花は動かない。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ