月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第17章 夢の終わり
―想うゆえに、狂っていった者。喪失の痛みに耐え切れず、忘れることもでぎす、ただひたすら想い続けた。
―子どもって、親にとっては本当に大切な、自分の生命にも代えがたいものなのね。
子を喪ったからこそ、理蓮は狂った。それを間近に見ただけに、香花の愕きと衝撃は大きかった。
ポツリと洩らした香花に、光王は言った。
―俺にはよく判らない世界だな。
両班であった彼の父は、彼が産まれる前に、彼自身の存在をきっぱりと否定した。可愛がって育ててくれた母は彼が四歳の時、亡くなった。肉親の縁薄い彼にしてみれば、確かに、親子間の情愛はを理解するのは難しいのかもしれない。
自分も既にふた親を亡くした身ではあるが、少なくとも、両親に愛されて育ったという自覚と想い出がある。だが、光王にはそれらの一切がないのだ。
その時、香花は光王の壮絶すぎる少年時代に改めて想いを馳せたものだった。
―子どもって、親にとっては本当に大切な、自分の生命にも代えがたいものなのね。
子を喪ったからこそ、理蓮は狂った。それを間近に見ただけに、香花の愕きと衝撃は大きかった。
ポツリと洩らした香花に、光王は言った。
―俺にはよく判らない世界だな。
両班であった彼の父は、彼が産まれる前に、彼自身の存在をきっぱりと否定した。可愛がって育ててくれた母は彼が四歳の時、亡くなった。肉親の縁薄い彼にしてみれば、確かに、親子間の情愛はを理解するのは難しいのかもしれない。
自分も既にふた親を亡くした身ではあるが、少なくとも、両親に愛されて育ったという自覚と想い出がある。だが、光王にはそれらの一切がないのだ。
その時、香花は光王の壮絶すぎる少年時代に改めて想いを馳せたものだった。