月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第18章 第5話【半月】・疑惑
刹那、香花の可愛らしい顔が強ばる。
「どうして、そんな風に思うんですか?」
その問いに、今度は内儀の方が心外だと言わんばかりの表情をした。
「そりゃ、その話もこの町では随分前―あんたたちがここで暮らすようになってから囁かれてきた話だよ。兄さんのお前さんに対する可愛がり様にしたって、お前さんたちの睦まじさだって、何を取ったって、どう見ても兄妹っていうよりは恋人か夫婦のようだもの」
「そう―なんですか?」
今更のように訊ねる香花を見て、内儀は朗らかに笑った。
「嫌だねえ。肝心のご当人さんは何も気付いちゃ、いなかったとでもいうのかね」
急に無口になった香花に、内儀は明るい声音で告げた。
「心配は要らないよ。私たちは何も、お前さんたちの身許をあれこれ詮索しようなんて考えは欠片(かけら)ほどもないんだから。ただね、お前さんの倍よりも長く生きた者から老婆心として言わせて貰えば、どんな事情があるのかしれないが、互いに慕い合ってるのなら、一日も早くきっちりとけじめをつけて晴れて夫婦になれば良いんじゃないかと思ってさ」
「どうして、そんな風に思うんですか?」
その問いに、今度は内儀の方が心外だと言わんばかりの表情をした。
「そりゃ、その話もこの町では随分前―あんたたちがここで暮らすようになってから囁かれてきた話だよ。兄さんのお前さんに対する可愛がり様にしたって、お前さんたちの睦まじさだって、何を取ったって、どう見ても兄妹っていうよりは恋人か夫婦のようだもの」
「そう―なんですか?」
今更のように訊ねる香花を見て、内儀は朗らかに笑った。
「嫌だねえ。肝心のご当人さんは何も気付いちゃ、いなかったとでもいうのかね」
急に無口になった香花に、内儀は明るい声音で告げた。
「心配は要らないよ。私たちは何も、お前さんたちの身許をあれこれ詮索しようなんて考えは欠片(かけら)ほどもないんだから。ただね、お前さんの倍よりも長く生きた者から老婆心として言わせて貰えば、どんな事情があるのかしれないが、互いに慕い合ってるのなら、一日も早くきっちりとけじめをつけて晴れて夫婦になれば良いんじゃないかと思ってさ」