月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第18章 第5話【半月】・疑惑
香花は何も返すべき言葉を持たず、黙り込む。
内儀が急に口調を改めた。
「ごめんよ。どうも今日は余計なことを言っちまったようだ。どうか私の言ったことなんぞ、気にしないでおくれ」
香花は先刻、内儀から貰ったばかりの大目の賃金を小さな巾着に押し込むと、慌ててペコリと頭を下げた。
香花は十日に一度、近くの村からこの町まで内職で仕立てた衣(ころも)を持って出てくる。香花にいつも仕立ての仕事を紹介してくれるのが、この町の呉服商の女主人である。露店ではなく、小さいなりにも、ちゃんとした店を構えている店だ。
亭主はもう数年前に亡くなり、女独りで店を切り盛りしてきたというのだから、なかなか気骨のある女性なのだろう。ここの店から回して貰う仕事以外にも、個人的に仕立てを頼まれることもあるにはあるが、やはり、前者の方が圧倒的に多い。
内儀が急に口調を改めた。
「ごめんよ。どうも今日は余計なことを言っちまったようだ。どうか私の言ったことなんぞ、気にしないでおくれ」
香花は先刻、内儀から貰ったばかりの大目の賃金を小さな巾着に押し込むと、慌ててペコリと頭を下げた。
香花は十日に一度、近くの村からこの町まで内職で仕立てた衣(ころも)を持って出てくる。香花にいつも仕立ての仕事を紹介してくれるのが、この町の呉服商の女主人である。露店ではなく、小さいなりにも、ちゃんとした店を構えている店だ。
亭主はもう数年前に亡くなり、女独りで店を切り盛りしてきたというのだから、なかなか気骨のある女性なのだろう。ここの店から回して貰う仕事以外にも、個人的に仕立てを頼まれることもあるにはあるが、やはり、前者の方が圧倒的に多い。