月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第18章 第5話【半月】・疑惑
〝天下の大義賊光王〟の素顔を知る者は一人としておらず、人相書きを作ろうにも作れないという有様なのだ。何枚か市中に出回った人相書きは、光王本人とは似ても似つかない面相ばかりだった。
とはいえ、幾ら何でも町の賑わいの中では、光王の人並み外れた美貌は目立ちすぎる。しかも、彼の髪は陽光に当たれば金褐色に輝き、瞳は時に深い蒼にも染まって見える。彼が町ではなく村を選んだのも当然のことであったろう。
その鄙びた貧しい農村の片隅に、今、香花と光王は暮らしている。光王は小さな仕舞屋の周囲に粗末な柵を巡らせ、ささやかな畑を作り、つがいの鶏を放し飼いにした。そのお陰で、二人だけでの暮らしに必要な野菜や卵も事欠かないし、光王と香花の二人の稼ぎを合わせれば、十分やってゆける。
村で暮らし始めてから、既に二年近くが経つ。光王は漢陽で暮らしていた頃と同様、毎日、小間物の行商をして町を歩き回っている。香花もこうして買い物や仕事でしょっちゅう町に出てくるため、二人は町の住人ともすっかり顔馴染みになった。
とはいえ、幾ら何でも町の賑わいの中では、光王の人並み外れた美貌は目立ちすぎる。しかも、彼の髪は陽光に当たれば金褐色に輝き、瞳は時に深い蒼にも染まって見える。彼が町ではなく村を選んだのも当然のことであったろう。
その鄙びた貧しい農村の片隅に、今、香花と光王は暮らしている。光王は小さな仕舞屋の周囲に粗末な柵を巡らせ、ささやかな畑を作り、つがいの鶏を放し飼いにした。そのお陰で、二人だけでの暮らしに必要な野菜や卵も事欠かないし、光王と香花の二人の稼ぎを合わせれば、十分やってゆける。
村で暮らし始めてから、既に二年近くが経つ。光王は漢陽で暮らしていた頃と同様、毎日、小間物の行商をして町を歩き回っている。香花もこうして買い物や仕事でしょっちゅう町に出てくるため、二人は町の住人ともすっかり顔馴染みになった。