
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第18章 第5話【半月】・疑惑
香花が頷くと、シニョンは自慢の白いたっぷりとした顎髭を撫で撫で呟いた。
「香花と光王は誰が見ても、兄妹に見えない。どころか、お前たちが慕い合っているのは眼にも明らかだ。何しろ、お前の兄さんは、お前を両班の箱入り娘以上に大切にして、外の風にも当てたくないと言わんばかりだからのう。だとくれば、ちょっとお節介焼きな人間なら、早く所帯を持てば良いのにと余計なひと言を言いたくもなるっていうものだ」
黙り込んだ香花を優しい眼で見つめ、シニョンは穏やかに問いかけた。
「それとも、香花。お前たちの間には、晴れて夫婦になるのに障りでもあるのかい?」
そのひと言に、香花はまだうっすらと涙ぐんだまま首を振る。
互いに両想いだと判ってから、既に一年が過ぎた。その間、二人の間には格別な進展は何もなかった。―それは正直、はしたないようではあるが、香花にとっては肩透かしを喰らったような気分でもあった。
「香花と光王は誰が見ても、兄妹に見えない。どころか、お前たちが慕い合っているのは眼にも明らかだ。何しろ、お前の兄さんは、お前を両班の箱入り娘以上に大切にして、外の風にも当てたくないと言わんばかりだからのう。だとくれば、ちょっとお節介焼きな人間なら、早く所帯を持てば良いのにと余計なひと言を言いたくもなるっていうものだ」
黙り込んだ香花を優しい眼で見つめ、シニョンは穏やかに問いかけた。
「それとも、香花。お前たちの間には、晴れて夫婦になるのに障りでもあるのかい?」
そのひと言に、香花はまだうっすらと涙ぐんだまま首を振る。
互いに両想いだと判ってから、既に一年が過ぎた。その間、二人の間には格別な進展は何もなかった。―それは正直、はしたないようではあるが、香花にとっては肩透かしを喰らったような気分でもあった。
