
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第18章 第5話【半月】・疑惑
光王と香花の関係は両想いだと判る前と、殆ど変わらない。光王は基本的に香花には甘いが、いざ香花の身に危険が及ぶかもしれないと察知したときには、異常なほどの過保護ぶりを発揮する。
どこまでも優しいかと思えば、〝お転婆騒馬(ソマル)〟と香花が怒り出すまでからかったり、まるで年下の少年のように他愛ない意地悪をしかけてきたりする。
たまに香花の方がたじろぐほど艶めいた視線で熱っぽく見つめ、軽くついばむような口づけを唇や額に落とす。―その先は、けして踏み越えようとはしない。どれほど甘い雰囲気になろうと、光王は先に進まず、最後は、まるで本当に兄が妹にするように香花の髪をくしゃくしゃと撫で回して、それで終わりだ。
その先に待ち受けるものがそも何なのか。応えを知るのは、本音を言えば、怖い。でも、心から愛し合っているのであれば、惚れているのであれば、自然に関係は変わってゆくものではないのか。
そう考えている香花にとって、光王の相変わらずの〝良いお兄ちゃんぶり〟はホッとすると共に、意外でもあった。そんな光王の控えめな優しさに対して、淋しさを憶えている自分がいる。
どこまでも優しいかと思えば、〝お転婆騒馬(ソマル)〟と香花が怒り出すまでからかったり、まるで年下の少年のように他愛ない意地悪をしかけてきたりする。
たまに香花の方がたじろぐほど艶めいた視線で熱っぽく見つめ、軽くついばむような口づけを唇や額に落とす。―その先は、けして踏み越えようとはしない。どれほど甘い雰囲気になろうと、光王は先に進まず、最後は、まるで本当に兄が妹にするように香花の髪をくしゃくしゃと撫で回して、それで終わりだ。
その先に待ち受けるものがそも何なのか。応えを知るのは、本音を言えば、怖い。でも、心から愛し合っているのであれば、惚れているのであれば、自然に関係は変わってゆくものではないのか。
そう考えている香花にとって、光王の相変わらずの〝良いお兄ちゃんぶり〟はホッとすると共に、意外でもあった。そんな光王の控えめな優しさに対して、淋しさを憶えている自分がいる。
