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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第18章 第5話【半月】・疑惑

 光王は漢陽にいた時代、関係した女は数え切れないほどだと聞く。何しろ、金を積まれれば、誰とでも寝たというし、〝惚れてもいない女を抱くのに、心など要らない〟と広言してはばからなかったような女たらしだったのだ。
 香花を好きになってから、他の女は欲しくなくなったのだと言っているけれど、実のところ、それが真実がどうかを確かめうるすべはない。ただ香花が恋人を信じよう―或いは信じたいと思っているだけなのかもしれない。
 それほど多くの女人と関わり合った光王の眼に、自分はどう映じているのかと、香花は時々不安になる。さして美しくもなく、十六歳になっても相変わらず子どもっぽい自分に、光王がもし物足りなさを感じているのだとしたら。だから、光王がいつまで経っても、香花に指一本触れようとしないのだとしたら。

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