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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第18章 第5話【半月】・疑惑

「今はどうやら、使道(サド)さま(ナーリー)のお屋敷に滞在しているようだが。使道さまの客人なら、都でもそれなりの地位にある両班に違いないと町の皆で噂しているってことだ」
 使道(府使)の客人―、ならば、やはり光王の正体を知り、捕らえにきた役人なのだろうか。だが、先刻も考えたように、役人ならば、わざわざそんな回りくどいことをしなくても、一斉に大勢で押しかけて光王を捕まえれば済むはずだ。
 一体、その都から来た両班の狙いは何なのか、何故、今頃になって、光王につきまとおうとするのか。
 光王が〝義賊光王〟として都を騒がせたのは、もう数年も前のことなのだ。
―どれだけ義賊ともてはやされようが、所詮、盗っ人は盗っ人だ。
 いつだったか、彼自身が半ば自嘲気味にそう語っていたように、かつて庶民から救世主か英雄のように慕われ、〝この世を光で照らす真の王〟と崇められた〝盗賊光王〟も結局は盗賊でしかなかった。

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