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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第18章 第5話【半月】・疑惑

 〝光王〟がふっつりと姿を消し、都に現れなくなってからというもの、様々な噂が飛んだ。〝光王〟は捕り物の途中の怪我が元で亡くなったとも、寄る年波には勝てず死んだのだとも言われたし、中には、ここらが潮時と都落ちしたのだと当たらずとも遠からずといった推測まであった。
 〝光王〟が消息を絶ってからしばらくは都でも大がかりな捜索が行われていたものの、手がかりは一切なかった。元々、網の目のように張り巡らされた捜査網を巧みにかいくぐり、その姿さえ役人の眼には晒したことがないのだ。
 半年後、国王自らの命で、〝盗賊光王〟の捜査は打ち切られた。
 それから更に年月を経て、今になって、〝光王〟捕縛の命が下るとも思えない。しかし、ただ人である一介の行商人光王を都の身分もある両班が訪ねてくる理由など何もないのである。

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