月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第18章 第5話【半月】・疑惑
たとえ商売上で何か問題が起きたとしても、それを何の拘わりもない香花にぶつけるほど狭量な男では断じてない。
何か―よほどの出来事があったのだ。
それでなくても、町で光王の素姓を嗅ぎ回っている両班の話を耳にして、光王の身が案じられてならなかったのだ。昼間も瞼に浮かんだ不吉な映像―光王が役人に捕らえられる場面が幾度も浮かんでは消え、居ても立ってもいられなかった。
だから訊ねただけなのに、束縛しないでくれだなんて、あまりにも酷い。が、今夜はこれ以上、そのことについては追及しない方が良いだろうと香花は考え直した。普段なら笑い流せる話に、今日は二人共に感情的になろうとしている。こんなときは、できるだけ相手をそっとしておく方が賢明だ。
香花はもう何も言わず、黙って夕飯の支度にかかった。
今夜は光王の大好物である。しかし、好物のチゲを食べる間も、彼はひと言も発そうとはしなかった。いつもなら、町で見聞きした出来事を面白おかしく話して聞かせてくれ、香花は眼を輝かせてその話に聞き入るのだ。
何か―よほどの出来事があったのだ。
それでなくても、町で光王の素姓を嗅ぎ回っている両班の話を耳にして、光王の身が案じられてならなかったのだ。昼間も瞼に浮かんだ不吉な映像―光王が役人に捕らえられる場面が幾度も浮かんでは消え、居ても立ってもいられなかった。
だから訊ねただけなのに、束縛しないでくれだなんて、あまりにも酷い。が、今夜はこれ以上、そのことについては追及しない方が良いだろうと香花は考え直した。普段なら笑い流せる話に、今日は二人共に感情的になろうとしている。こんなときは、できるだけ相手をそっとしておく方が賢明だ。
香花はもう何も言わず、黙って夕飯の支度にかかった。
今夜は光王の大好物である。しかし、好物のチゲを食べる間も、彼はひと言も発そうとはしなかった。いつもなら、町で見聞きした出来事を面白おかしく話して聞かせてくれ、香花は眼を輝かせてその話に聞き入るのだ。