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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第18章 第5話【半月】・疑惑

 この頃、香花は光王の気持ちがよく判らない。光王が心変わりをしたとは思いたくないけれど、シニョンにも打ち明けたように、所詮、自分などのような世間知らずの小娘には光王の心を繋ぎ止めておくことは不可能ではないのか。
 光王には、もっと妖艶な色香溢れる大人の女―この世の道理を知り尽くした女人こそがふわさしい。そして、それは、けして自分ではない。
 光王がけして一線を踏み越えようとしないのは、香花と距離を置きたいと思い始めているからではないのか。それこそ兄と妹のような関係ならともかく、恋人や夫婦といった観点から見れば、光王と香花ではあまりにも釣り合わないし、香花では役不足だ。
 もし光王が自分を重荷だと思っているのなら、香花はいつでも身を退く覚悟はできている。これまでは光王の優しさに甘えて共に暮らしてきたけれど、そろそろ自分も独り立ちして良い頃だとも考えているのだ。いつまでも、光王に甘えてばかりいるのも、あまりに厚かましいというものだろう。

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