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月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】

第18章 第5話【半月】・疑惑

 香花がいちばん怖れているのは光王に嫌われるよりも、彼の真実の気持ちに気付かず、いつまでも彼の傍に居続けることだった。疎まれているのに、彼の傍にいて重荷だと思われるのだけは耐えられない。
 光王と両想いだと判ったときは、嬉しかった。今すぐでなくても、いつか自分も光王の妻となり、朴家のユンウォンのように可愛い赤ン坊を生み、貧しくとも温かな家庭を築くのだと漠然と夢見ていたのだ。
 だが、もしかしたら、それも叶わない夢なのかもしれない。
 香花は溢れそうになった涙を手のひらでこすり、長い吐息をついた。
 月もない夜の闇は深く、家の外はその闇にすっぽりと覆い尽くされている。だが、今、香花の心はそのぬばたまの闇よりも更に深い闇に閉ざされていた。

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