月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第19章 訪問者
訪問者
その二日後の昼下がり、香花は近くの河原にいた。しゃがみ込んで、洗濯物と格闘していた香花の背後で突如として声が響き、彼女は小さな悲鳴を上げた。
「お嬢さん」
おっかなびっくり振り向いた香花の前に、長身の男が立っている。先日、町で香花を助け起こしてくれた両班である。
「―!」
片手で軽く胸を押さえた香花は愕きを隠せない。心臓が口から飛び出しそうだ。手脚の指先まで冷たくなる恐怖を味わっていた。いきなり声をかけられ、更にその男が光王の素姓について聞き回っている両班だと知れば、驚愕は尚更だ。
「済まない、愕かせてしまったようだ」
今日の男は銀鼠色の衣をゆったりと纏い、玉を連ねた帽子を被っている。やはり、その身なりからも彼がかなりの身分の両班だと思わざるを得ない。
その二日後の昼下がり、香花は近くの河原にいた。しゃがみ込んで、洗濯物と格闘していた香花の背後で突如として声が響き、彼女は小さな悲鳴を上げた。
「お嬢さん」
おっかなびっくり振り向いた香花の前に、長身の男が立っている。先日、町で香花を助け起こしてくれた両班である。
「―!」
片手で軽く胸を押さえた香花は愕きを隠せない。心臓が口から飛び出しそうだ。手脚の指先まで冷たくなる恐怖を味わっていた。いきなり声をかけられ、更にその男が光王の素姓について聞き回っている両班だと知れば、驚愕は尚更だ。
「済まない、愕かせてしまったようだ」
今日の男は銀鼠色の衣をゆったりと纏い、玉を連ねた帽子を被っている。やはり、その身なりからも彼がかなりの身分の両班だと思わざるを得ない。