月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第19章 訪問者
それにつけても、そのような身分ある貴族が何故、わざわざ漢陽から遠く離れた辺鄙な村までやって来たのか。その意図を計りかねる。
「何かご用でしょうか?」
香花もまた丁重に訊ねると、男は頷いた。
「少し話をしても構わないだろうか」
香花が頷くのを見て、男は控えめな口調で言った。
「構わなければ、家で話したいのだが」
外聞をはばかる話なのかもしれない。
香花は少し躊躇った。全く見知らぬ男と二人だけになるのは危険かもしれなかった。が、結局、香花は男を家に案内した。
何より、この男が香花に危害を加えるようには思えなかったからだ。香花はこの都から来たという両班に対して、何故か妙な懐かしさを感じるのだ。初めはその理由が自分でも判らなかったが、ほどなくそれに気付いた。
男がどことなしに光王の面影を彷彿とさせるからだ。不思議なことだった。光王は誰が見ても朝鮮人離れした美貌だし、眼前の男は生粋の朝鮮人に見える。年齢も風貌も光王とは歴然とした違いがあるのに、どこか、この二人は似ている。
「何かご用でしょうか?」
香花もまた丁重に訊ねると、男は頷いた。
「少し話をしても構わないだろうか」
香花が頷くのを見て、男は控えめな口調で言った。
「構わなければ、家で話したいのだが」
外聞をはばかる話なのかもしれない。
香花は少し躊躇った。全く見知らぬ男と二人だけになるのは危険かもしれなかった。が、結局、香花は男を家に案内した。
何より、この男が香花に危害を加えるようには思えなかったからだ。香花はこの都から来たという両班に対して、何故か妙な懐かしさを感じるのだ。初めはその理由が自分でも判らなかったが、ほどなくそれに気付いた。
男がどことなしに光王の面影を彷彿とさせるからだ。不思議なことだった。光王は誰が見ても朝鮮人離れした美貌だし、眼前の男は生粋の朝鮮人に見える。年齢も風貌も光王とは歴然とした違いがあるのに、どこか、この二人は似ている。