月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第19章 訪問者
香花は男がこれですんなりと後に退くとも思っていなかったのだが、男は意外にも、あっさりと納得した。
「確かに、そなたの申し分は正しい。どうやら、光王はたいした女人に眼を付けたらしい。度胸もあって、駆け引きもなかなか上手いとくれば、並の娘ではなさそうだ」
男がこのまま光王を待たせて欲しいと言うので、これには少し迷った挙げ句、承知した。
ここでこの男を帰しても、心配が終わるわけではない。むしろ、光王に逢って話がしたいという男の出方を見て、これから先の対策を考えた方が良さそうだ。上手くいけば、この怪しい男の正体を掴む機会となるだろう。
しばらくして男が横になり、うとうとと微睡み始めたので、香花は男を一人残し、再び川原に戻って洗濯の続きに取りかかった。
洗濯物を抱えて戻ってきた時、男はまだ腕枕をしたまま、呑気に居眠りしていた。香花はしばらく佇んで、その寝顔を見つめていた。
やはり、似ている。眠っているときの無防備な表情は、先刻見たよりも更に光王がよく見せる顔と一致していた。帽子を脱いでいるので、その端整な容貌が更によく見える。
「確かに、そなたの申し分は正しい。どうやら、光王はたいした女人に眼を付けたらしい。度胸もあって、駆け引きもなかなか上手いとくれば、並の娘ではなさそうだ」
男がこのまま光王を待たせて欲しいと言うので、これには少し迷った挙げ句、承知した。
ここでこの男を帰しても、心配が終わるわけではない。むしろ、光王に逢って話がしたいという男の出方を見て、これから先の対策を考えた方が良さそうだ。上手くいけば、この怪しい男の正体を掴む機会となるだろう。
しばらくして男が横になり、うとうとと微睡み始めたので、香花は男を一人残し、再び川原に戻って洗濯の続きに取りかかった。
洗濯物を抱えて戻ってきた時、男はまだ腕枕をしたまま、呑気に居眠りしていた。香花はしばらく佇んで、その寝顔を見つめていた。
やはり、似ている。眠っているときの無防備な表情は、先刻見たよりも更に光王がよく見せる顔と一致していた。帽子を脱いでいるので、その端整な容貌が更によく見える。