月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第19章 訪問者
気配に気付いたのか、男がうっすらと眼を開ける。濃い影を落とす長い睫が震え、その視線が香花を捉えた。
「私としたことが、つい深い眠りに落ちてしまったようだ」
男は苦笑いを刻み、ゆっくりと身を起こした。
「お目覚めになりましたか」
香花は声をかけると、土間になった厨房に行き、夕飯の準備に取りかかる。もっとも、厨房とはいっても、男のいる居間からは続きになっている。境の扉も開け放しているので、香花の姿は男から丸見えだ。
「いきなり上がり込んだかと思うと、昼寝を決め込むとは、また随分と厚かましい男だと思われてしまっただろうね」
いいえ、と、香花は男には背を向けたまま、甲斐甲斐しく野菜を刻みながら応える。
「旦那さまは漢陽からおいでになったのでしょう? 長旅をなさっておいでになったのだから、お疲れでも不思議はありませんよ」
しばらく、いらえはなかった。
「私としたことが、つい深い眠りに落ちてしまったようだ」
男は苦笑いを刻み、ゆっくりと身を起こした。
「お目覚めになりましたか」
香花は声をかけると、土間になった厨房に行き、夕飯の準備に取りかかる。もっとも、厨房とはいっても、男のいる居間からは続きになっている。境の扉も開け放しているので、香花の姿は男から丸見えだ。
「いきなり上がり込んだかと思うと、昼寝を決め込むとは、また随分と厚かましい男だと思われてしまっただろうね」
いいえ、と、香花は男には背を向けたまま、甲斐甲斐しく野菜を刻みながら応える。
「旦那さまは漢陽からおいでになったのでしょう? 長旅をなさっておいでになったのだから、お疲れでも不思議はありませんよ」
しばらく、いらえはなかった。