
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第19章 訪問者
光王が今、口にしたように、彼は追いつめられている。何故かまでは知り得ないけれど、光王はあの男に深い遺恨を抱いているようだ。その男への憎悪が光王の中で渦巻き、荒れ狂っている。
香花は、あれほどまでに取り乱した光王を初めて見た。このままでは、光王は激情に負けて、気が狂ってしまうかもしれない。こんな形で光王と結ばれるのは嫌だし、見知らぬ世界に身を投じるのは怖い。でも、このまま、手負いの獣のように傷ついた眼をした男を突き放すことなどできはしない。
香花は、恐怖と衝撃に見開いていた眼をゆっくりと閉じる。できるなら、甘やかな恋人らしい雰囲気の中で、互いを思いやり労り合いながら、この瞬間を迎えたかった―。
後悔と哀しみの涙が湧き上がる。
と、突然、光王の逞しい身体が離れた。途端に自らの身体にかかっていた重みがなくなり、香花は眼を開く。
香花は、あれほどまでに取り乱した光王を初めて見た。このままでは、光王は激情に負けて、気が狂ってしまうかもしれない。こんな形で光王と結ばれるのは嫌だし、見知らぬ世界に身を投じるのは怖い。でも、このまま、手負いの獣のように傷ついた眼をした男を突き放すことなどできはしない。
香花は、恐怖と衝撃に見開いていた眼をゆっくりと閉じる。できるなら、甘やかな恋人らしい雰囲気の中で、互いを思いやり労り合いながら、この瞬間を迎えたかった―。
後悔と哀しみの涙が湧き上がる。
と、突然、光王の逞しい身体が離れた。途端に自らの身体にかかっていた重みがなくなり、香花は眼を開く。
