
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第19章 訪問者
あの男(ひと)が、あのいかにも貴族然とした都の両班が光王のお父さん―?
俄には信じられないことだ。しかし、以前、光王自身の口から、彼の実父は実は両班なのだと聞いたことがある。ならば、あの人が光王の父親だというのも恐らくは嘘ではないのだろう。
光王は座り込んだ格好のまま、両手で顔を覆っている。香花は静かに近づき、背後から光王の身体に両手を回して、そっと抱きしめた。広い背中に頬を寄せると、大好きな彼の匂いがして、香花はふいに泣きたくなった。
「教えて、あの方は光王のお父さまなの?」
乱れた髪がはらりと光王の横顔に落ちている。香花は愛情に満ちた仕草で、そのひとすじの髪を整えてやった。
光王はいつもの彼らしくもなく素直に幼子のように、なされるがままになっている。
「お前には、みっともないところばかり見せちまうな」
光王がほろ苦く笑った。
俄には信じられないことだ。しかし、以前、光王自身の口から、彼の実父は実は両班なのだと聞いたことがある。ならば、あの人が光王の父親だというのも恐らくは嘘ではないのだろう。
光王は座り込んだ格好のまま、両手で顔を覆っている。香花は静かに近づき、背後から光王の身体に両手を回して、そっと抱きしめた。広い背中に頬を寄せると、大好きな彼の匂いがして、香花はふいに泣きたくなった。
「教えて、あの方は光王のお父さまなの?」
乱れた髪がはらりと光王の横顔に落ちている。香花は愛情に満ちた仕草で、そのひとすじの髪を整えてやった。
光王はいつもの彼らしくもなく素直に幼子のように、なされるがままになっている。
「お前には、みっともないところばかり見せちまうな」
光王がほろ苦く笑った。
