
月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第19章 訪問者
「あいつはお袋を使い捨てのボロ雑巾みたいにあっさりと棄てた野郎だ」
ややあって、光王がポツリと洩らした。
「あなたは、あの人と既に逢っていたのね? だから、私が二日前、あの人の話をしたときも、話したくなさそうにしたのね」
光王はその問いについては、肯定も否定もしなかった。だが、先刻の父親だという男とのやりとりを見ていれば、応えは訊かずとも判る。
光王がそっと香花の身体を離す。
香花は彼と向かい合う形で座った。
「―四、五日ほど前のことだった。あいつが突然、眼の前に現れたんだ」
光王は覚悟を決めたのか、訥々と話し出した。
その時、光王は町外れの酒場にいた。丁度昼飯刻をやや回った頃合いだったため、普段はごった返す酒場も、客は数えるほどしかいなかった。
一人で飯を黙々とかき込んでいた彼の前に、突如として立ちはだかったのがあの男―父親だったというわけだ。
ややあって、光王がポツリと洩らした。
「あなたは、あの人と既に逢っていたのね? だから、私が二日前、あの人の話をしたときも、話したくなさそうにしたのね」
光王はその問いについては、肯定も否定もしなかった。だが、先刻の父親だという男とのやりとりを見ていれば、応えは訊かずとも判る。
光王がそっと香花の身体を離す。
香花は彼と向かい合う形で座った。
「―四、五日ほど前のことだった。あいつが突然、眼の前に現れたんだ」
光王は覚悟を決めたのか、訥々と話し出した。
その時、光王は町外れの酒場にいた。丁度昼飯刻をやや回った頃合いだったため、普段はごった返す酒場も、客は数えるほどしかいなかった。
一人で飯を黙々とかき込んでいた彼の前に、突如として立ちはだかったのがあの男―父親だったというわけだ。
