月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第19章 訪問者
呼び声に、男が立ち上がる。つと振り向くのに、香花は深々と頭を下げた。
「ああ、そなたは」
男の整った面に微笑がひろがった。
やはり、似ている。香花もまた自然に笑顔になった。
涼しげな眼許、形の良い鼻筋。まるで写し取ったように似ている。
光王ほどではないにしても、この父親も若かりし頃はさぞ女人の熱い視線を集めたに違いない。ましてや両班の若さまともなれば、寄ってくる女性は引きも切らなかっただろう。
光王の母もまた、自分が光王を恋い慕うように、この男を―光王の父を一途に慕ったのだろうか。
恐らく。そのときの光王の父の想いも母の想いも変わりはなかったはずだ。眼前のこの男がそれほどまでに残酷な仕打ちをする人だとは、香花にはどうしても思えない。
現実として、確かにこの男は光王の母に対して酷いことをしたのだが、そこに何か深い事情が隠されているのではないか。そう思えてならないのだ。
「ああ、そなたは」
男の整った面に微笑がひろがった。
やはり、似ている。香花もまた自然に笑顔になった。
涼しげな眼許、形の良い鼻筋。まるで写し取ったように似ている。
光王ほどではないにしても、この父親も若かりし頃はさぞ女人の熱い視線を集めたに違いない。ましてや両班の若さまともなれば、寄ってくる女性は引きも切らなかっただろう。
光王の母もまた、自分が光王を恋い慕うように、この男を―光王の父を一途に慕ったのだろうか。
恐らく。そのときの光王の父の想いも母の想いも変わりはなかったはずだ。眼前のこの男がそれほどまでに残酷な仕打ちをする人だとは、香花にはどうしても思えない。
現実として、確かにこの男は光王の母に対して酷いことをしたのだが、そこに何か深い事情が隠されているのではないか。そう思えてならないのだ。