月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第20章 父と子
と、光王が悪戯好きの少年のような表情になる。
「なら、この際、婚礼を挙げるか?」
「なっ、何てこと言うのよ」
香花が熟した林檎のように真っ赤になっているのを横目でちらりと見、光王が真顔になる。
「俺は本気だぜ」
「そ、そんな話はまた今度で良いの」
香花は這々の体で光王から離れ、家の中に逃げるように駆け込んだ。
まだ胸が高鳴っている。烈しく動悸を打つ胸を宥めるように手のひらで押さえ、香花は空いた方の手で頬に触れる。頬もまた異常に熱かった。
―光王の意地悪。
香花がこんな風に狼狽えるのを見て、からかって愉しんでいるのだから、始末に負えない。
おかしなものだと自分でも思う。光王が一歩を踏み出さないことをもどかしく思いながらも、一方で、彼がいざ踏み込もうとすれば、逃げ出したくなってしまう自分。光王と早く結ばれたいのか、そうではないのか、当の自分ですら判らない。
「なら、この際、婚礼を挙げるか?」
「なっ、何てこと言うのよ」
香花が熟した林檎のように真っ赤になっているのを横目でちらりと見、光王が真顔になる。
「俺は本気だぜ」
「そ、そんな話はまた今度で良いの」
香花は這々の体で光王から離れ、家の中に逃げるように駆け込んだ。
まだ胸が高鳴っている。烈しく動悸を打つ胸を宥めるように手のひらで押さえ、香花は空いた方の手で頬に触れる。頬もまた異常に熱かった。
―光王の意地悪。
香花がこんな風に狼狽えるのを見て、からかって愉しんでいるのだから、始末に負えない。
おかしなものだと自分でも思う。光王が一歩を踏み出さないことをもどかしく思いながらも、一方で、彼がいざ踏み込もうとすれば、逃げ出したくなってしまう自分。光王と早く結ばれたいのか、そうではないのか、当の自分ですら判らない。