月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第20章 父と子
「なあ、丸半日、足を棒にして町を歩き回った恋しい亭主のために、何か作ってくれようという優しい気持ちは起こらないのか?」
「―光王、私の厭がる科白は二度と口にしないって言ったわよね、たった今、ここで」
背を向けたままの香花が低い声で問う。
「あっ、ああ、誓ったとも」
「なら、何で恋しい亭主なんて言うのよ~。あなたはまだ私の良人じゃないでしょうに」
「い、いや。それは、その。まあ、良いじゃないか。細かいことに拘るのは止そうぜ。香花、明日でも一緒に町に行くか? 何か欲しいものがあれば、今度、俺が買ってやろう。商売物で良ければ、今すぐにでもやれるぞ。何なら、見せてやろうか。そういえば、一昨日、漢陽から届いたばかりの最新流行の鏡があったな」
光王は素っ頓狂な声を上げ、慌てて商売道具の入った荷に飛びついた。風呂敷を解き、箱を開くと、ずらりと小間物が並んでいる。いずれも女性が歓びそうなものばかりだ。
「―光王、私の厭がる科白は二度と口にしないって言ったわよね、たった今、ここで」
背を向けたままの香花が低い声で問う。
「あっ、ああ、誓ったとも」
「なら、何で恋しい亭主なんて言うのよ~。あなたはまだ私の良人じゃないでしょうに」
「い、いや。それは、その。まあ、良いじゃないか。細かいことに拘るのは止そうぜ。香花、明日でも一緒に町に行くか? 何か欲しいものがあれば、今度、俺が買ってやろう。商売物で良ければ、今すぐにでもやれるぞ。何なら、見せてやろうか。そういえば、一昨日、漢陽から届いたばかりの最新流行の鏡があったな」
光王は素っ頓狂な声を上げ、慌てて商売道具の入った荷に飛びついた。風呂敷を解き、箱を開くと、ずらりと小間物が並んでいる。いずれも女性が歓びそうなものばかりだ。