月下にひらく華~切なさの向こう側~第6話【漢陽の春】
第20章 父と子
「光王?」
唐突に暗くなった光王の声に、香花は眼を見開く。
「お前には想像もつかないだろう。香花、俺のお袋は妓生だったんだ。そして、お袋が俺にその歌と話を聞かせてくれるときは、大抵、昼間だった。それがどういうことか、お前には判るか?」
まるで謎かけをするような光王の問いに、香花は首を傾げるしかない。
光王は、ふっと笑み零す。それは、彼らしくもない気弱な笑みだった。
「両班の家に生まれたお前には知る由もない世界の話だ」
光王は再び眼を閉じ、想いに耐えるような顔で呟く。
「まだ幼かった俺は当然ながら、毎夜、お袋と一緒に寝たかった。でも、お袋は夜は客を取らなきゃならないから、子どもに添い寝なんてしてやれるはずもない。俺はその辺が判らなくて、いつも泣いて愚図って、お袋を困らせた。そんな時、お袋が決まって聞かせてくれたのが半月の歌であり、月の舟の話だったんだ」
唐突に暗くなった光王の声に、香花は眼を見開く。
「お前には想像もつかないだろう。香花、俺のお袋は妓生だったんだ。そして、お袋が俺にその歌と話を聞かせてくれるときは、大抵、昼間だった。それがどういうことか、お前には判るか?」
まるで謎かけをするような光王の問いに、香花は首を傾げるしかない。
光王は、ふっと笑み零す。それは、彼らしくもない気弱な笑みだった。
「両班の家に生まれたお前には知る由もない世界の話だ」
光王は再び眼を閉じ、想いに耐えるような顔で呟く。
「まだ幼かった俺は当然ながら、毎夜、お袋と一緒に寝たかった。でも、お袋は夜は客を取らなきゃならないから、子どもに添い寝なんてしてやれるはずもない。俺はその辺が判らなくて、いつも泣いて愚図って、お袋を困らせた。そんな時、お袋が決まって聞かせてくれたのが半月の歌であり、月の舟の話だったんだ」